ぐんと寒くなった。
毛布を出したい。
引っ越しでバタバタして毛布を箱に詰めたままだ。
以前は毛布を家から歩いて数分のコインランドリーに持って行って、カラカラ洗ってホワホワに乾かして、気持ちがよかった。
まだ温かい毛布。
とても清潔な私の毛布。
天気の心配もせずあっという間にその場で乾く清潔なコインランドリーが好きだ。
コインランドリーはコンビニに行く時の裏通りにあって、さびれていて、いつも誰もいない。
初めてそのコインランドリーを利用した時、洗濯機の使い方がよくわからなくて、たまたま洗濯物を車で運んできたおじさんに聞いた。
大きな洗濯機の中でカラカラ回る洗濯物を興味深く覗き込んでいたら、おじさんに、
「不安なんでしょ?」
と言われた。
ただ回っているのが面白くて、好奇心で見ていただけなのに。
知らない男性に、「不安でしょ?」と言われ、心に触られる気がした。
見ず知らずの女性に安易にかけるべき言葉ではないと思った。
無神経な人だ。
いつでもおじさんは無神経だ。
地下鉄の中で大きなくしゃみをするおじさんに限ってマスクをしていないみたいに。
福祉で私のサポートをしてくれている後藤さんと電話で話した。
後藤さんとは何でも話す。
この辺りにはコインランドリーはないみたいだからクリーニングに頼もうか。
眞子さまのPTSDの診断が発表されてから、少し気持ちが不安定になることがある。
私は電話で少し涙ぐみ、後藤さんが、わかってるから大丈夫ですよ。
と声をかけてくれる。
私達はもうずっとこういうことをしている。
後藤さんは私のことを10年近くサポートしてくれている。
先生とうまくいかなくなってしまった時も支えてくれた。
私はいつも後藤さんに、何ものにも代え難いお礼がしたくて、何年も策を練っている。
思い付いても体調は安定せず、先伸ばしにする癖もあり、理想のお礼の実行には程遠い。
新しい歯医者に通い始めた。
歯の痛みが出ているのに予約が取れず、やっと予約日が見えてきたと思ったら口角炎が治らない。
夜休んで少し良くなったと思っても、食べればまた口の端が切れてしまう。
口角炎の軟膏をもらって、また二週待って、だいぶ良くなってからやっと治療に入った。
歯医者は痛いので苦手だ。
私はとても臆病なのだ。
だから治療が終わった帰りは小さな達成感を感じる。
見上げた夜空にきれいな満月。
数日調子が悪かったのによく行った。
と自分をほめる。