9月に入り長く眠った。
知らぬ間に雨が降り、知らぬ間に止んでいる。
窓から見る外の景色は白く煙っている。
雨が止む度、秋が深まっていくのを感じる。
涼しくなると、夏場の勢いのある熱を少しずつなくしていく。
日も短くなり、午前5時になってもまだ暗く、黄昏時も早くなった。
セミの鳴き声が時折聞こえる。
まだ夏は終わりきってはいないのか。
8月に本屋に入った。
カフェが併設されて天井が高い。
私はすっかり気に入った。
ここでならゆっくり本が読める。
本に飽きたら、また新しい本を選んで読むことも可能だ。
自分が居心地が良いと思った場所で、いくらでも本が読めるという贅沢。
しかしたまたま訪れた場所で、私の住む地域からは遠く、もう訪れることは難しいだろう。
本を三冊とポストカードを購入しただけでカフェは利用しなかったが、こういう落ち着ける空間がある地域の人達が羨ましい。
うちの近くにはカフェと本屋が一緒になった所はない。
ごゆっくりどうぞ。
コーヒーもあります。
本に飽きたらまた新しい本を探してくださいね。
というスタンスは魅力的だ。
もちろんカフェと本屋には同時に利益があるわけだけど。
飲料水すら持ち込めない図書館は息が詰まる。
その本屋で購入した三冊の本を同時に読んでいる。
まだ一冊の本に集中して読む力はない。
この間先生と電話で話した時、本の話が出た。
先生は、
「本が読めるようになったことは良かったですね」
と言ってくれた。
私にとって、今まで本を読むことがいかに難しかったことか。
本が読めなくなって26年経つ。
ここまで来た。
集中力はまだなくて途中で息切れするけれど、最後まで本を読むことが出来たなら、私は少し本来の自分に近づけるだろうか。
気に入ったカフェでのんびり読書することも可能だろうか。
がつがつ本を読んだ昔が懐かしい。
食欲の秋。
スポーツの秋。
読書の秋。
何年間も自分と縁遠かった読書が出来るようになったなら、ひとつの体験として私の中に刻みこまれ、皆と一緒に秋を堪能することが出来るだろうか。