小学生の頃。
よく
こんなことを考えた。
放課後。一人で家にいる時。
一本の電話がかかってくる。
電話機越しに聞こえる声の主は、品の良い女性で、今から車を寄こして私を迎えにくる、と言う。
その人は、私の実の母親で、私は迎えに来た車に乗って、ドラえもんに出てくるしずかちゃんの家に似た白い家に向かうのだ。
私は本当はこの家の子ではないのだ。
やっぱり。
と思う。
やっぱり私はこの家の子ではなくて、別の家の子なのだ。
本当の母親が迎えに来てくれて、私は本当の家に帰る。
その後は想像していなかった。
ただ、別に家族がいること。
この家は私の住む家ではないこと。
そう夢想することが、度々あった。
私は放課後、いつも家に一人でいることが多かったので、一本の電話がかかってきて、それを私が受けるという可能性は充分あった。
しかし、そんな電話は結局かかるわけもなく、すっかり忘れてしまっていた。
最近、そんな想像を小学生の頃していたなぁ、と思い出した。
その頃はなぜそんなことを想像していたのか、わからなかった。
一人でいて、家でお話を書いたりするのが好きな小学生だったので、普段とは違う想像をするのも楽しかったのかもしれない。
と思ったりしていた。
そんな夢想をすることに意味がある、とは最近まで思ったことがなかった。