♪もっと勝手に恋したり
もっとキッスを楽しんだり
忘れそうな想い出を
そっと抱いているより
忘れてしまえば
今以上それ以上愛されるのに
あなたはその透き通った瞳のままで♪
最近、よくこの歌を口ずさんでいる。
うろ覚えで、同じ箇所を繰り返し。
言わずと知れた「安全地帯」の「ワインレッドの心」である。
なぜ最近、急にこの曲を口ずさんでいるんだろう。
と考えたら、手持ちのグレーのコートに合うワインレッドのマフラーを、いつもネットで探していて、頭からワインレッドのイメージが離れないからだった。
この曲が流行ったのは、私が中学の頃だ。
特にファンだったわけでもないから、うろ覚えでも仕方ない。
ちょうどその頃、玉置浩二と石原真理子が不倫をして、世間を騒がせた。
どういう内容の会見だったか覚えていない。
美しかった。石原真理子。
黒いロングヘアに長い睫毛。
淑やかに、細い指でさらさらした黒髪を耳に上品にかけ、涙が瞳から、はらはらと零れ落ちた。
なんて美しい。
この人は愛してはいけない人を愛してしまい、申し訳なさと、どうしようもない愛情の狭間で、揺れ動き、切なさに苦しんでいる。
誰もがうっとりした。
中学生の私も、いけない恋をしてしまった、この美しい人に心奪われた。
不倫が大ブームだった。
この会見のせいかもしれない。
誰もが、してはいけない恋をしてしまう程の恋。に憧れた。
不倫ブームは、私の中で、バブル時代と重なっている。
そんなことを思い出しながら、歌詞を口ずさんでいた。
♪忘れそうな想い出をそっと抱いているより
忘れてしまえば
今以上これ以上愛されるのに
これは私?
大事な想い出をそっと自分で抱きしめているのは、
私だ。
そうだ。
大事に抱きしめ過ぎていた。
傷つけてしまった。という心の痛みと、どうしようもない申し訳なさを、ずっと抱え混んでいたのは、私だった。
もう随分、昔のことだ。
相手は忘れてしまっただろう。
抱えこんでいたのはきっと私だけだ。
忘れてしまえば。
忘れてしまえば、新たな何かが得られるのかもしれなかった。
大事に大事に抱きしめて、
ゆっくりゆっくり育っていったのかもしれない感情。
そおっとそおっと、手放せば、新しい感情が訪れるのかもしれない。
感情も、空いたスペースに入ってくるものなのかもしれない。
だから、今は、
大事だった記憶をそおっと手放して、
新しい感情が訪れるのを、静かに待とう。
♪今以上それ以上愛されるまで
あなたのその透き通った瞳の中に
あの消えそうに燃えそうなワインレッドの
心を写し出してみせてよ揺れながら