8月12、13日はペルセウス座流星群が見られる、とネットのニュースで知り、12日深夜、階段の踊り場で北東の空を見上げていた。
一体、いつからこんなにも星が見えなくなったのだろう。
身を乗り出してみるが、上空には4、5個ほどしか星が見えない。
小学生の頃を思い出してみる。
空には満天の星々があった。
飽きずに眺めて、たまには流れ星を見ることもあった。
理科の授業で、夜空から一つ、星を選んでその星がどう動くか観察しなさい。という課題が出た時、夜空を見上げて、こんなに光る星空からどの星を選ぼうか、悩んだこともあった。
それから40年。
星は見えなくなった。
かわりに、地上に幾千もの赤い光が明滅している。
山肌に、横浜ランドマークの近くに、そのもっと向こうに。
赤い光がチラチラと光る。
まるでどこかで空襲でもあったかのように、空が赤く、地上がうっすら発光している。
そのことに気付いたのは最近だ。
ランドマークタワーはもちろん、大きなビルは必ず赤い電光を放つし、電波塔も赤い明滅を繰り返す。
人がそこにいる限り、活動すればするだけ、赤く光を放つ。
その光は人工的で、薄っぺらで、風情もない。
こんなに地上が明るいから、空も明るくなってしまったのだ。
智恵子が言うように、もはや関東には空がなく、安達太良山にあるかどうかさえ怪しい。
関東平野の山並みがうっすら赤い。
これでは星が見えなくて当たり前。
この40年間で日本は猛烈に発展して、空をなくした。
星の見えない夜空なんて。
子ども達に以前の空を見せてあげたい。
まるで星が降ってくるようにキラキラしていたあの頃の夜空。
そんなに星が見えたの?
目をまるくして子ども達は驚くだろう。
今日は満月がきれいに見えるが、月を見ることすら出来なくなったら、人は滅ぶ。
それでも8月13日になる前に、流星群と思われる流れ星を、一つ見ることが出来た。
連日の暑さで、大気が不安定になっているのだろうか。
二日続きで通り雨。
晴れているのに、ざっとくる。
二度、三度。
干して、雨に降られた洗濯物をまた洗い直す。
コンビニから出ようとしたら、また雨。
横でおばさんが、
「またかよ」
と空に言う。
コンビニのイートインで通り雨を見て、アイスコーヒーを飲む。
雨が過ぎた頃を見計らって、外に出る。
あっという間に出来た水溜まりにセミのなきがら。
夏。
セミは一生分、数日で鳴き通して、種を残す。
自分が繋いだ命を見ることはない。
40年前には夜鳴くことのなかったセミが、今夜も鳴いている。