夏が終わる。
7月はめっぽう寒くて、8月が真夏で、このところ雨が多かった、変な夏が終わる。
気付くと日の入りが早くなり、朝が明けるのが遅くなった。
毎朝4時に鳴き出したセミが、朝5時に鳴き始める。
セミの声がまばらになって、聞こえなくなる。
冷たいうどんが食べたくなくなる。
インド綿のさらさらした部屋着を着なくなる。
それが夏の終わりだ。
どんな季節の変わり目も知らずに過ぎていくけれど、この夏から秋への変わり目は、毎年なぜだか物悲しい。
うるさいセミの合唱が止んで、町に日常が戻る。
日射しがジリジリ照りつける夏はもう来ない。
人は喧騒を好むのか。
祭のあと。
友人達とはしゃいだ帰り道。
非日常から日常に戻る時。
そして秋は、次に来る冬への始まり。
外では秋の虫が鳴いている。
でも、実は夏も鳴いている。
秋になると、不意に夜鳴く虫の声が沁みてくる。
何着も試着して買った新しいジーンズ。
先生の所に行った帰りに駆け足で見て回ったセールのお店。
「ママ、もう歩けないよ」
セール中のショップにいた泣き出しそうな子ども。
また素敵なジーンズに目が留まる懲りない私。
二回の虫刺されと美味しく淹れたアイスコーヒー。
流れ星。
そんな私の夏がそろそろ終わる。