今。
私は記憶を辿っている。
長い長い年月。
私は何をしていたのかと。
この30年に及ぶ年月、どこで何をして、何を考えていたのかと。
そしてすっかり自分の中で抜けてしまった過去を思い返すことで、過去を蘇らせて自身の記憶として頭の中で定着させることは出来ないだろうか、と考えている。
そういう試みをしている。
日常生活すら危うい中で、不意に少しの過去を思い出し、そこから記憶を手繰り寄せるという行為は、なかなか難しく、はかどらない。
でも、過去に重きをおきながら現在も生きることは悪くない。
何気ない日常生活を送ることだって、私にとっては有難いことなのだ。
現在も過去も。
同時に感じ取りながら、今を生きて行く。
そんな有難いことってあるだろうか。
今まで鬱がひどく、まともな生活は送ってこられなかったのだから。
生温かい空気を感じる。
太陽の煌めきに緑を揺する木々。
セミの鳴き声。
そうだ。夏なんだ。
と、実感する自分がここにいること。
そうやって一つ一つ自分に言い聞かせ、毎日を過ごしている。
そう感じることが私にとって、大事な一歩なのだ。
今までそう感じることすら出来なかった私には、甘い蜂蜜同然のご褒美。
今を生きること。
今、感じられること。
今、私は心穏やかで、健やかに生活していること。
今日も食べる物があって、自分で作った料理が美味しく感じられる。
ベランダに出ると空が見渡せて、日射しと月光が浴びられる。
他の人にとっては当たり前な日常が、今の私にはとてもありがたくて、「私は良くなったんだ」と噛み締める。
先生と二人三脚で歩んだ9年。
大揺れの波に何度も二人してさらわれながら、ここまでやってきたんだ。
先生。
私は先生に出会ってからこんなに良くなったよ。
何年か前よりだいぶ、前を見て歩こうと思ってるよ。
私は今日、元気でやってるよ。
そう先生に伝えたい毎日をこれからも送れますように。