誰でも
「お母さんの部屋」を持っている。
生まれた時から、その部屋には「お母さん」がいる。
おっぱいをくれて、抱きしめてくれて、笑顔で自分を愛してくれる。
赤ちゃんには理想もないから、そのままその人を受け入れる。
生まれた時に初めて目にするのが、自分の「お母さん」。
愛情を無尽蔵に与えてくれる。
これからずっと頼りにして、自分を決して裏切らないで、正しい方向に導いてくれる。
誰にとっても必要な存在。
だから「お母さんの部屋」には必ず、初めて目にした、おっぱいをくれて微笑みかけてくれたお母さんがいる。
誰にも必ずだ。
その存在を赤ちゃんは忘れることはないし、ずっと信じ続ける。
もしそのあと、その人がいなくなってしまっても、「お母さんの部屋」は存在する。
ただ、部屋の中にはお母さんがいなくて、がらんどうになってしまう。
がらんどうになってしまった部屋を持ち続ける人もいるだろう。
それはとても空虚で、冷たい風が吹き抜ける。
そんな部屋を持つ人は、自分の心にも風が吹き抜けているかもしれない。
そんな人もいる。
だから人は「お母さんの部屋」に入ってくれる誰かを探そうとする。
私にはずっと母がいる。
「お母さんの部屋」には私の母が入っていて、そこは温かく、愛情で満ちていると思っていた。
だから私には「お母さんの部屋」の不満は何もない。
と思っていた。